ドイツリポート 2011.8-9
Fドイツのエネルギーはどこへ向かうのか
〜フクシマと政治と国民の選択(要旨)
社会民主党の前シュレーダー政権が打ち出した脱原発政策をいったん延期した現メルケル政権でしたが、フクシマ後、いきなり2022年に原発全廃へと転換しました。国民の間ではさすがにあまりに極端だといわれるほどです。
野党では、せいぜい10%程度だった環境政党の緑の党の支持率が、震災直後28%に跳ね上がり、最近は落ち着いてきたものの20%台を維持しています。この春にはドイツ南部の重要な州の議会選挙で初めて第一党となり、州の連立政権与党として州の首相(ドイツの州は日本の県に比して何倍も権力がある。)を握りました。緑の党の主張はこうです。「2050年に再生可能エネルギーの比率80%という政府の主張は甘すぎる。100%にするべきだ。」
(写真:緑の党アウグスブルク支部にて)
ドイツと日本の再生可能エネルギー政策の違いでよく取り上げられる例は、太陽光発電の普及の経緯です。かつて手厚い保護で太陽光エネルギー世界一だった日本が「安心」して補助を打ち切ったあと、FIT制度を導入したドイツにまたたく間に抜き去さられ、日本のエネルギー政策の甘さを指摘されました。しかし、肝心なのは単なるトップ争いではなくその背景にあるものです。
ドイツが現在のエネルギー政策を進めている大きな要素の一つにエネルギー安全保障の確保の問題があるのを忘れてなりません。目的は順位や数字ではなく、何のために行うかという理由に意味があります。ロシアから輸入される天然ガスに頼ることは、エネルギーを止めたり価格を決めたりする権利を常にロシアにゆだねるリスクが存在するということです。ですから、再生可能エネルギーの拡大は、ドイツにとって外国に頼らないエネルギー源を自ら持つという重要な目的になりうるのです。
(写真:ドイツ中部の石炭火力発電所)
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