ドイツリポート 2011.8-9
E巨大エネルギー産業とエネルギーの自由化
〜キーワードはローカル化(要旨)
ドイツででも、4つの大きな電力エネルギーコンツェルン(E.On、RWE 、EnBW、Vattenfall)がロビイストを使い政治家と結びついて長い間電気エネルギー業界に君臨して、電気料金を独占的にコントロールしてきたと言われています。
しかし、この体制が揺らぐきっかけが1990年代末に行われた『電力の自由化』でした。この結果、発電する企業と電気を供給する企業がほぼ分離され、他の企業も自由に参入することができるようになりました。ただし、それが電力料金にも影響を及ぼすようになるためには、巨大な資本力で発電施設を持つ大企業に対抗する独立電源としての発電会社が必要でした。その後、小さな資本でも発電ができる再生可能エネルギーの普及によって、地域の発電会社が増え電力も競争力を持つようになったのです。結果として、電力料金が大きく引き下げられました。
ノルトラインヴェストファーレン州のハインスベルク郡は、あることでドイツでの一番を誇っています。大手の発電会社に頼らない独立系の電力の割合が30%を超えてドイツ国内で最も高いのです。ここでは自治体が率先して「100の屋根をエコ電気のために」のスローガンを掲げて太陽光発電の普及に取り組んでいます。また、ここにはオランダに本社のある多国籍のエネルギー供給会社アリアンダー社のドイツ法人があります。アリアンダー社はオランダおよびドイツでおよそ3百万人の顧客に対して電力とガスの供給をコントロールしています。エネルギー供給会社、ドイツ語でネッツベトライバー(Netzbetreiber)とは日本では聞きなれない会社です。発電と送電が分離されているドイツではごく普通の存在で、アリアンダー社はその中でも、再生可能エネルギーからのエネルギーに力を入れ、「緑のエネルギー供給会社」を自認しています。
ドイツと日本の家庭で使う電気の違いは、ドイツではどの会社から電気を買うかが選べるのに対して、日本ではその地域の決まった電力会社からしか買えないことです。たとえば、インターネットの電力供給会社比較サイトにドイツ南部の工業都市のひとつアウグスブルクの郵便番号を入れてみましょう。瞬時に150もの選択肢が現れます。年間6万5千円程度から最高12万円まで様々な条件のもとで多様な料金が並びます。様々な電力供給会社が安い電力を競って提供し、消費者はこれを自由に選ぶことができます。エコ電気(Oekostrom)だけを指定して選ぶことさえできるのです。
ドイツでは、エネルギーの自由化は決してカッコの良いスローガンではなく、エネルギーを使う国民のお財布のレベルまで降りてきている現実の取り組みになっています。
(左:あるエネルギー供給会社の電気料金明細書〜モデル)
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