2012. 8. 6 ドイツの再生可能エネルギー電力、ついに全体の4分の1超え
〜今年前半のデータ、太陽光発電が押し上げ
7月末にドイツエネルギー水道事業連合会(BDEW)が明らかにした今年前半の電力に関する統計によると、2012年の1月から6月まで半年間の発電量のうち25%以上が再生可能エネルギーによる電力だったことがわかりました。これは、もちろん初めてのことで、再生可能エネルギーにとって今年は歴史的な年となったとコメントがついています。
それによりますと、2012年前半の半年間の再生可能エネルギーによる発電量は679億kWhと昨年同時期の564k億Whを大幅に上回りました。
これによって、全体の発電量に占める再生エネ電力の割合は25.1%と、昨年の21%からさらに大きく伸びました。
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2012年前半 |
2011年前半 |
2012年前半 |
2011年前半 |
(単位) |
(億kWh) |
(億kWh) |
(%) |
(%) |
風力 |
249 |
210 |
9.2 |
7.7 |
バイオマス |
153 |
145 |
5.7 |
5.3 |
太陽光 |
144 |
98 |
5.3 |
3.6 |
水力 |
108 |
87 |
4.0 |
3.2 |
その他 |
25 |
24 |
0.9 |
0.9 |
合計 |
679 |
564 |
25.1 |
20.7 |
ドイツの再生エネ電力(BDEWの資料をもとに日本再生可能エネルギー総合研究所が作成)
2.電源別の動向 〜太陽光による発電量が47%の増加
電源別に見てみましょう。
*風力
変わらず、風力発電がトップです。昨年(7.7%)より1.5ポイント伸ばしましたが、北部ドイツでの増加が目立ちます。今後は、陸上から洋上に主力が移り、北海、バルト海の洋上風力が急激に伸びていくでしょう。また、陸上では旧式の風車の建て替え、リパワーリングが期待されています。
*バイオマス
続いて、2位も昨年と同様でバイオマスです。全体の3分の2近くが家畜系廃棄物やエネルギー作物を使うなどしたバイオガス発電で、昨年末のドイツ国内のバイオガスプラントは合計7200基を越えました。今年1月からの新しい再生可能エネルギー法の施行で買い取り価格の減額がわかっていたため、昨年末はプラントの激しい駆け込み設置が起きました。
バイオガスプラントの原料としては、従来の家畜系廃棄物からエネルギー作物(トウモロコシが中心)へのシフトが見られています。また、一方で、出来上がったバイオガスを発電ではなく、直接パイプラインに入れてガスのまま使用するやり方も行われるようになっています。
*太陽光
なにより、再生エネ電力の割合を押し上げたのは、太陽光による発電です。発電量は昨年より47%も増え、全電力量に占める割合も昨年の3.6%から5.3%へと跳ね上がりました。
太陽光に関しては、昨年7.5GW、今年に入ってからも4月までに2GWという爆発的な施設導入が続きました。このため、今年初めにスタートしたばかりの新再生エネ法の改定が行われ、太陽光発電の買い取り価格がさらに下げられました。これまで快進撃を続けバブルとまで言われた太陽光の伸びは、今後はぐっと落ち着くものと考えられます。
*水力
水力発電も昨年をやや上回りました。細かい内訳がないため、理由は現状では判然としません。しかし、再生エネ電力の急増に伴って、電力を一時貯めておく揚水発電の需要が高まっています。実際に、原発を持っていたドイツの大きな電力会社が水力発電所の建設計画を発表するなど動きがあります。
(BDEWの資料をもとに日本再生可能エネルギー総合研究所が作成)
せっかくの機会なので、今回発表されたドイツの天然ガスと電力の使用料についても記しておきましょう。
*天然ガスの消費量
2012年前半の天然ガスの消費量は4953億kWhと前年比で0.4%増えました。これは、発電所で電力や熱を生産する際の天然ガスの使用量が減った一方で、ドイツでは2月と4月が非常に寒く、部屋の暖房のために天然ガスの需要が非常に高まったことが原因です。
*電力消費量
電力消費量は今年の前半で2615億kWhでした。前年に比較して1.4%の減少でした。
これは、製鉄や化学原料、製紙など電力多消費型の生産が下がったことが大きな要因だったとされています。
これまでも何度も繰り返しているように、再生エネ電力が増大するとこれまでにはなかったいくつかの問題点が浮かび上がってきます。
大きく分けると、2つの不一致が考えられます。@発電場所と電力需要地の不一致、A発電時期と使用時期の不一致です。
*発電場所と需要地の不一致の対策
例えば、風力発電が急激に伸びている北部ドイツには大きな産業などがなく、発電量が増えるのに電力を消費する場所がありません。一方で、原発に頼りがちだった中部から南部ドイツは人口も多く、電力を大規模に消費する工業地帯が並びます。この需給のアンバランスは、今後さらに洋上風力が伸びることで拡大を続けます。
そのギャップを埋めるのが送電線です。大量生産値の北部から大量消費地の南部に電力を一気に送ろうというわけです。
5月29日付のドイツの高級紙フランクフルター・アルゲマイネに「新規の高圧送電線網計画に320億ユーロ」という記事が掲載されました。
北部の風力発電パークから南部への電力輸送が緊急の課題であるとした上で、ドイツの4大送電会社が発表した送電計画がまとめられています。
内容は、再生可能エネルギー電力へのシフトにはドイツ全体で3800kmの新規の高圧送電線が必要であること。さらなる4000kmに及ぶ既存の『電力アウトバーン』の近代化と併せておよそ200億ユーロの費用が掛かること。2022年までに北の海域での洋上風力との送電接続に120億ユーロのコストが見積もられています。
最近特に送電網に関して政府の対応の遅れを非難する声が上がっており、再生可能エネルギーへの大きなシフトを進めているドイツの現時点での最大の課題と言われています。
*発電時期と使用時期の不一致の対策
これは再生エネに限ったことではありませんが、天候に左右されやすい風力や太陽光発電の特徴がそのまま表れた結果です。
仮に前述の高圧送電線が完全に整備されても、ある時点でどこにも電力が足らないという状況がなければ発電した電力を送る場所がなくなってしまいます。この時に必要になるのが、電力貯蔵の技術です。2030年には全体の35%、2050年には80%の電力を再生可能エネルギーでカバーしようとしているドイツでは、次の大きな課題はこのエネルギー貯蔵の技術開発だと言われています。
ドイツでは現在エネルギー貯蔵はほとんどすべて揚水発電で行われています。現時点では、揚水発電の最大貯蔵量は40GWhで、これはドイツの電力消費のおよそ30分程度でしかありません。このため、他国のノルウェーやオーストリアの揚水発電を利用する計画もあります。
7月11日付のドイツのIWR(国際経済フォーラム)のWEBには、ドイツ政府の「エネルギー貯蔵に関する60の新規の革新的研究プロジェクトがスタート」した記事が掲載されました。
目的は、はっきりと2050年の時点で80%の再生エネ電力を安定的に供給するためとされ、政府はエネルギー貯蔵技術のブレークスルーとコストダウンを図り、早急な市場投入を実現させたい考えを明らかにしています。具体的には、深夜に余りがちな風力からの電力を、水素と蓄電池で貯蔵、利用するプロジェクトなどがあげられています。
再生エネ電力が全体の4分の1を越えて、ドイツの再生可能エネルギーへのシフトは新しいステップへと大きく踏み込みました。再生エネ移行への本格的な対策が必要になってきたのです。すでに、急がれている対策、さらに10年、20年先を見据えた対策など緊急度は様々ですが、間違いなく日本でも求められる対策となるに違いありません。
以上
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