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日本再生可能エネルギー総合研究所は、再生可能エネルギー普及のための情報収集と発信を行っています。

リポートReport

 2012. 7.30 太陽光発電50kW未満パッケージ、小さなシステムの大きな可能性
          〜固定価格買い取り制度を利用しよう! part

                                    

1.相次ぐ小規模発電システムのパッケージ販売

○ソーラーフロンティア、非住宅向け「小規模発電所パック」発売(7月18日 環境ビジネス)

 ソーラーフロンティアは7月より、非住宅向けの太陽光発電パッケージ商品「小規模発電所パック」の販売を開始した。10kW50kWの太陽光発電システム一式をパッケージしたもので、企業や個人が所有する小規模の遊休地を利用して、短期間で太陽光発電所を設置することができる。

 CIS薄膜太陽電池、パワーコンディショナ、架台、発電計測システムをセット、設備容量を50kW以内に抑えることで、低圧配電線への接続による発電事業を可能にした。50kWの設置の場合、約1,000平方mの土地があれば設置が可能で、設置作業は1カ月前後。また、固定価格買取制度を適用した場合、およそ10年程度で初期投資が回収できる見込み。

○カナディアン・ソーラー・ジャパン、農林業従事者ら向け中小規模の産業用太陽光発電システムを8月より販売
 (7月19日 環境ビジネス)

 出力規模は50kW以下で、太陽電池モジュールのほか、パワーコンディショナ、架台等の周辺機器を含めた太陽光発電システムをパッケージにした。
 主に、農林業従事者向けの販売を想定し、遊休地、耕作放棄地、汚染地などを有効活用できる、中小規模の産業用太陽光発電システムとして拡販を図る。

 これ以外にも、Looopという太陽光パネル販売会社が、12kWの太陽光発電のDIYキットを発売して話題になっています。トータル315万円、1kWあたりの費用が26万円台(設置費用別)という低価格です。さらに、全国規模の設置依頼と保険システムも組み込まれています。

 背景にあるのは、設置規模10kW以上で、1kWhあたり税込42円の買い取りが20年間続くという固定価格買い取り制度です。家庭用の住宅の屋根なら、せいぜい4kW程度なので買い取り期間は10年にしかなりません。これらのパッケージの売りは、コストダウンさえ可能であれば、大規模な太陽光発電所でなくても十分なメリットを得ることができるという訳です。

2.小規模パッケージのポイントとリターン

*低圧配電線への接続

 まず何より出力規模を50kW以下に抑えたことで低圧配電線への接続を可能にし、施設全体の建設コストを下げることが可能になるということです。

*資金準備負担の軽減

 まだまだプロジェクトファイナンスが難しい日本の場合、資金をどうやって捻出するかは大きな課題です。例えば、設置費など込々で1kWあたり30万円が達成できたとすれば、50kW規模で1500万円となります。

 土地を持っていることが前提にはなりますが、この額であれば、退職金レベルで賄えないことはありません。また、複数で投資を行えば、3人なら500万円ずつ、借金なしで十分負担可能です。投資の見返りによっては、メリットを感じられます。

*リターン

 さて、アバウトな計算しかできませんが、リターンはまずまず期待できます。

 ソーラーフロンティアの50kWのプランでは、10年間の回収です。だいたい1kWあたり40万円程度の合計2000万円の初期投資と考えられます。11年目からは丸々買い取り分が収入となります。年間1000時間の日照時間とすれば、

 50kW×1000時間×買い取り42円 で計算できます。これならば、老後の年金を十分増やせる悪くないプランです。

 50kWのパッケージを推奨しているドイツのフライブルク在住の環境ジャーナリスト村上敦氏は、先ほど例として示した1kW30万円を考えています。7〜8年での回収です。これが実現できれば、IRRは確実に2ケタになります。大きな魅力を持つこのプランは再生エネ普及の起爆剤となるはずです。(来年の3月末までであれば、「グリーン投資減税」も利用できます。)

3.地元への波及効果ス化

 まず、私としてはメガソーラーを嫌っているわけでも、反対しているわけでもないことを書いておきます。再生エネ電力の拡大には大規模施設は間違いなく必要です。(誤解のなきよう。笑)

 例えば、10MWのメガソーラーをある地域に設置したとしましょう。20数億円から30億円程度の投資になるでしょう。地元の自治体へは、主に固定資産税が入ることになります。ただし、太陽光発電では直接の雇用はほとんど発生しません。ですから雇用効果は疑問です。

 自治体が中心となってうまく立ち回れば、最終的に設置に地元の工務店を使い、メンテナンスも地元に落とすことも可能です。事業所を作らせてさらに税金を取ることもできるかも知れません。そのくらいがメリットです。

 一方、同じ面積の土地を使って50kWの小規模発電を地元の住民で行ったと考えてみましょう。

 200人がそれぞれ50kW発電所のオーナーになります。これでもトータル10MWです。この場合、なんといっても収入はすべて地元の人たちの懐に入るのです。もちろん、その中から税金も払います。さらにオーナーさんたちはその収入の中から、基本的には地元で買い物をして地元にお金を落とすのです。

 この経済効果は、たいへん大きいものがあります。地元の中での経済循環です。トータルでは同じ規模の太陽光発電ですが、その中身はまるで違うものです。いわば、『地域の“小規模”メガソーラーシステム』でしょう。

4.ファイナンスと自治体のサポート

 再生エネの普及には、FIT制度だけでなく、ファイナンスのシステムも重要な役割を果たします。いくら買取り価格が良くても、事業をスタートさせる資金が無くては動きようがありません。

 本来、事業性を成り立たせるためにFITの買い取り価格が計算されているのですから、プロジェクトそのものの与信で資金を貸す「プロジェクトファイナンス」が成り立つはずです。ところが、先立ちであるドイツでさえも、プロファイが確立するまでにFIT制度のスタートから数年かかっています。

 小規模発電所を伸ばすことは、ある意味でFIT制度に基づく事業へプロファイを導入させることに結びつきます。確実に儲かることを証明できれば、プロジェクトファイナンスを定着させることができると考えられます。

 小規模発電所の潜在的オーナーが地元の住民ならば、融資を行う側も基本的には地元の信金や地銀でしょう。聞いたことのない都会の企業に貸すのではありません。たぶん、先陣を切るオーナーたちは、名前も顔もわかっている地元の名士ですから、さらに貸しやすいはずです。これまで、ただ国債に流れていた多量の預金が、ついに地元の融資先を見つけることができるのです。

 地元へのメリットが最大限に膨らむのは、このお金のサイクルが地元で完結する時です。地元のファイナンスを使って、地元の住民や企業が再生エネ電力を発電する。収入は地元に落ちて、再び新しい投資を呼び起こす。回っていなかったお金が回り始め、何倍にもなって地域を豊かにしていきます。

 再生エネの本来の性格はまさにここにあります。地域電源としての分散型電力だけでなく、地域経済を回す原動力になり得るのです。

 これを考えれば、地元の自治体の役割もだんだんはっきりしてくると思います。このサイクルを回す手助けをすることです。もちろん、再生エネ導入の補助金もそのひとつです。さらに、地元の金融機関と組んで、ファイナンスのサポートをすることも有効です。

 また、どこにどのような再生エネを導入するか、いわゆる『ゾーニング』を行うこと、また、メガソーラーなどで進出しようとする企業からいかに多くの利益を地元に落とさせるかの作戦を練って実行するのも大事な仕事となります。

 それらすべての前提には、どんな地域エネルギーの将来をビジョン描くのか、具体的なプランを作ることが非常に重要になります。再生可能エネルギーは地元の資源です。その資源を有効に利用する義務が自治体にあります。そして、その有効利用は必ず地元と自治体を潤すということを忘れてはいけません。

以上


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