2012. 2.24 注目される洋上風力発電
○ 関連ニュースから:
中でも洋上風力発電の導入が加速度的に伸びており、既設置の能力合計を国別でみると、1位イギリス、2位デンマークが圧倒的トップグループで、世界最大の367MWのウインドファームがこの2月スコットランド沖に完成したばかりです。以下、オランダ、ベルギーなど北海に面した国が並びます。しかし、新しいFIT制度で洋上風力発電に手厚い政策を示した(地上風力の倍近い買い取り価格の設定)ドイツが急激に追い上げてきており、この先2〜3年の間の新規設置ではドイツが上位を伺うと見られています。
洋上風力発電は、あらゆる面で地上風力よりコストがかかります。しかし、風の強さなど発電の効率性が地上の2倍というデータもあり、十分競争力があると考えられています。
さて、洋上風力関連の個別情報を見ると、あらゆる角度からのニュースが発信されています。
2月9日 初めての洋上風力展示会へ人気沸騰(ドイツ)
2月9日 洋上風力主要サプライチェーン会合に風力エキスパートが参集(ヨーロッパ)
2月7日 洋上風力施設の半分を国内で調達する方針(イギリス)
2月9日 洋上再生エネの世界リーダー保持に5千万ポンド投入を政府発表(イギリス)
と、ヨーロッパでの注目度が上がっているだけでなく、各国間の競争も激化しているのが見て取れます。
また、規制緩和や関連技術の開発も急ピッチで進んでいます。
2月2日 浮体式洋上風力発電の基礎に対する腐食防止策で性能テスト(ポルトガル)
2月6日 許認可改正で洋上風力の電力を素早くグリッドに(ドイツ)
2月7日 洋上風力発電所の緊急事態への対応、舶救助会社が検討(ドイツ)
2月9日 発電所に音響による海洋生物の保護システム設置に成功(ドイツ)
さらに、アジア関連でも、
2月1日 サムスンが7MWの洋上風力発電タービン製造場所としてスコットランドを検討(韓国、イギリス)
2月10日 三菱商事がドイツの洋上風力発電所の海底送電インフラ事業に200億円で参入(日本、ドイツ)
と、注目ニュースが入ってきました。
○ 洋上風力発電の経済効果
特徴のポイントを整理すると、
1.製造と運搬に係わるもの:タービンなど集積的製造基地、運搬用特殊船舶、機材の腐食防止策
2.建設にかかわるもの:建設用特殊船舶、送電用海底ケーブルと敷設
3.運転、メンテナンス:接岸用特殊船舶、人員の特殊訓練
地上風力とは、別物であることがよくわかります。つまり、新しい産業が生まれることと同意義で、そこには数多くのビジネスチャンスが秘められています。
経済効果として、例えば、
2月2日 洋上風力発電の雇用創出効果は10年で1万8000人(ドイツ)
というニュースや、洋上風力発電建設のための特殊船舶を韓国に発注、完成したニュースも続きます。さらには、現在北海向けなどの洋上風力発電製造基地が町を甦らせたドイツのブレーマーハーフェンでは、ロジスティック会社が200億円の新規投資を行うと発表しました。
太陽光発電に比べて、風力発電は部品の数が格段に多く、雇用効果も大変高いと言われていいます。洋上風力はさらに大きな経済効果が狙える有力アイテムです。
○ 浮体式風力発電と日本
1月31日 国交省、浮体式洋上風力の安全ガイドラインを年度内に作成(日本)
こんなニュースが登場しています。
この背景には、ヨーロッパで進む洋上風力発電のほとんどすべてが海底にタワーを据える固定式なのに対して、日本近郊の海が急に深くなるため固定式が向かないと言われていることがあります。
そこで、まさに浮かび上がってきているのが、浮体式の洋上風力発電です。
実は、大型の商用規模の浮体式はまだ世界に一つしか存在していません。
ノルウェーの西海岸、スタヴァンゲル市沖にあるStatoil所有のメガ風力発電所です。
○Hywind(ハイウインド)基礎データ
位置:ノルウェーの海岸の南西10km
所有者:Statoil(ノルウェーの大陸棚の石油とガス開発を行う世界的エネルギー会社、従業員2万人)
完成式:2009年9月9日
機材データ:
・風力タービンの発電能力 2.3MW
・タービンの重量 138トン
・タービンの高さ 65m
・羽根の直径 82.4m
・浮体の海底固定設備の深さ 100m
・全重量 5300トン
・海面での直径 6m
・アンカーの数 3個
・設置可能な深さ 海面下70〜120m
つまり、海中に浮かせた「浮体」の上に風車を取り付け、浮体は海底にアンカーで結びつけます。ここの場合は3本のアンカーが使われています。
長い試運転を経て、実用に供されることとなったHywindは、現在、順調に発電を行っています。
昨年2011年の1年間で、10GWhの発電を行い、ノルウェー西部の500家庭の電気を賄いました。この2,3年のうちにイギリスやアメリカの海岸への設置を目標としています。もちろん、ポテンシャルの大きい日本もターゲットに入っています。
課題は、コストや規制面だけではありません。地元の漁業との共存を前提とした調整も大きなポイントです。すでに洋上風力が当たり前の北欧やイギリスでは、それぞれ地元の漁協などとの交渉も経験しています。しかし、日本となると規制などだけでなく、漁業関係者との調整が欠かせないものとなります。
日本政府も、2011年度第3次補正で浮体式の洋上風力の実証試験の予算をつけ、世界最大の浮体式風力発電所を福島県沖に実現させることを目指しています。地元に集積的な風力発電用機器の生産基地を造れば、大きな雇用が生まれることになり、復興の目玉にしたい考えです。
特に、浮体式は実績が少なく、まさにこれからというところでしょう。だからこそ、様々な可能性がその中には存在します。当研究所でも技術や経済効果など複眼的な観点から追いかけていく予定です。
以上
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